若さとリセット

わたしは「バンドマン」にも「ブントマン」にもお友達がいますから、この話は個人的な実感でもあるわけですけども、わたしらにとっての「時間」について考えることが、今後わたしらが×××を埋める上で、何か指針があるような気だけします。

わたし個人としては、どっちかというと何かを「推進」する部類の仕事をしています。何もないところから、仕事を立ち上げる。モヤっとしたものをクッキリさせていく。そういう仕事をしていると、失敗と成功を繰り返しながら、物事はちょっとずつ前に進んでいく、というチーターの「365歩のマーチ」のような原理を噛み締めることになります。

それをやっていると「もうここまできちゃったら、いまさら戻れねえだろ」という感覚があります。だから、戻ることは考えずに、どうやってそこから更に進むか、を考える。もちろん真逆の「勇気ある撤退」も挫折と共に考える、もありますけども、ギリギリのところで考えることのパワーというのは、確実にあります。

わたし、日本って「そんなこと言ったって、ここまできたら、もう後戻りできねえだろ」っていって、進むしかなかったっていうことで作られてきた歴史があると思います。明治の維新も、戦争も、高度成長も、バブルも、その当時から賛否あり、葛藤あり、の中でいろいろ揺れ動くんですけど、結果的には、崩壊するまで物事は進んでしまっている。

連合赤軍の事件だって、若松さんの描写なんか見ても、「いまさら戻れるかよ」ということによる推進力を感じます。

わたし、この「いまさら戻れるかよ」の推進力をあらかじめ奪われている世代なんじゃないか、という仮説を立ててみたいんです。自分の世代に対して。

美術の世界でも、造形物は「創作」ではなくて「操作」になっている、なんて話があるんですけども、これは仕事だってそうです。日常の時間で「検証」と「やり直し」にかけている時間がどれほど多いのか、というのは、言われてみればそうだな、という感じしませんか?

80年代あたりから、オフィスにパソコンがきて、プリンターが来て、Eメールができて、人ひとりの労力は20分の1ぐらいに減っているかもしれませんけど、生産性が20倍になったのか、というと、そんなこともない。

つまり、そこにある差分は「失敗の可能性を減らすための時間」に充てられているのではないか、というのが私の仮説です。

例えば、失敗データベースというのがネットに公開されています。あらゆる産業の事故をデータベース化していて、事例と原因、反省ポイントなどが調べられるようになっている。

わたし「失敗から学べ」の人生なので、とてもこのサイト楽しく利用しているのですが、ふと思うのは、「建設」とか「製造業」の失敗(事故)に比べて、IT系の失敗(事故)がいかに少ないのか、ということを思うのです。

それは、産業の歴史そのものも違うのですけども、それよりも「いかに失敗をしないか(人の命を奪ったりしないか)」という失敗に学んだ先に、実は「IT」という産業の発展があったんじゃないか、なんてことを思うのです。

つまり、その「失敗を激減するにはどうするか」の社会の中で大きくなってきたわけですけど、先週金曜日に、ガキの頃「余計なことを考えるな」ということでコドモがよからぬ方向へいくことに予防線を張られていたのでは、と書きましたけど、「コドモがよからぬ方向へいく」の「よからぬ方向」というのは、具体的に言えば、つまり「仲間を殺しあう(内ゲバ)」そのもののことを意味していると思います。

「どうすれば人間は人を殺さずに済むのか」その失敗から学ぶ処方箋の先に、管理教育も、消費文化も、あったかもしれません。そして、人を殺す罪をおかしさえしなければ、「やり直しはいくらでもきくからね」ということになる。

でも、ここで最初に戻るのですけど、「いまさら戻れるかよ」の状況に行かない(行けない)ということは、「いつでも戻れるところにしか行かない(行けない)」ということでも、あるんですよね。

全共闘は、「いまさら戻れるかよ」という猪突猛進で、5,6年で連合赤軍まで行ってしまう。でもわたしらは「いつでも戻れる」の感覚で、比較的確実にマターをこなすしかないシステムの上にいるので、ホリエモンが逮捕されるまでに15年も要してしまう。

そして、もちろんそのことは、決して悪いことではないんですけどね。

ファミコンのリセットボタンではないけども、やっぱりリセット文化って、わたしらにとっては大きい。リセットボタンを手に持った状態では「いまさら戻れるかよ」というところには、能動的にはいけません。

だけど、受動的に「あれ、戻れない」という状況になってしまうことはあります。それが昨今の「ハケンギリ」とか「コンカツ」とか「カクサ社会」とかいう状況を産んでいるのではないかな、と。

「若さ故」ってことも、世の中にはありますもんね。

なんてことで、明日に続きます。