黄昏の商業施設

わたしの家の近所に、転居とタイミングを同一にしてオープンした商業施設があります。5階建の建物が2棟立っていて、一棟はフードコート、各種飲食テナント、生鮮スーパー、ホームセンター、駐車場といった構成。もう一棟を空中通路でつなぎ、もう一棟には書籍、CD、服、雑貨のテナント、赤ちゃん用品、飲食専門店、シネコンなどをテナントで配備する、といった具合。しかもその通路は吹き抜けになっていてステージと液晶ビジョンがあり、各種イベントが日替わりで行われる、といったようなもので、21世紀になって続々出てきた形態ですね。

転居してきた頃はコドモが赤ちゃんで、赤ちゃん用品の大手が近所にそこしか無かったので、たまにお世話になっていました。それはもう混雑していて、賑わいを見せていたんですね。駅からのシャトルバスなんかも出ちゃってね。

それで先日、久しぶりにフラッと行ってみると。。4月付でリニューアルしていました。

まず飲食テナントは多くが撤退、そこをホームセンター系の資材が埋め尽くされていました。通路のイベントスペースには観葉植物が並べられている。つまり園芸ショップになっちゃった。フードコートは完全撤去、スーパーやベーカリーは縮小され、そこにも靴や日用品といったものでスペースは埋め尽くされている。テナントが埋まらないところは、中古のCDやビデオ、本なんかを雑然と置いちゃう。

これは、つまり、商品が早く回転しないと廃棄となってしまうようなものを極力少なくして、いつまで在庫しても大丈夫なようなものを置いて、坪単価の効率を上げランニングコストを下げる、というようなことでしょうかね。いずれにせよ、生活提案、近隣住民の夢のスペースは5年で様変わりを余儀なくされてしまった、という現実に、少々黄昏を感じちゃいます。

今も特に閑散としている、というような感じではないのですけど、どうもその変貌は活気を無くす方向にしている。負の方向にシフトしている。そのうち閑散としちゃって、別の「新しい施設」に取って代わられるんでしょうか。

いずれにせよこういった感じの郊外型の商業施設の光景って、全国に多いんだろうなあと思うんです。

先日、遊園地とディズニーランドの施設の運営方法について考えましたけど、郊外型の商業施設って、バブルの時にバタバタ潰れたアミューズメント施設と同じ道を辿るんでしょうかね。なんとなくこうやるせなさというものがありますね。

その商業施設に行った前の日は、親戚のおじさんの家がある品川区の有名な商店街にいました。(なんとか銀座といえば、ここ、みたいなところ)。祖母の葬儀の帰りでしたけど。ここは、やっぱり場の力があるというか、夕方の賑わいなんかはすごいものがありますね。

おじさんおばさんの話だと、それでも「地元ならでは」の店は減ってきて、どこにでもあるようなテナント店が進出してきたりなんかしちゃって、住みづらくなっちゃったわよお、なんて話も聞きましたけど、それでもやっぱり、なんていうか、パワーがあるんですよね。

やっぱり下町の商店街も「次代継承」が間々ならず、廃業なんていうパターンが多いみたいです。そこに、どこにでもある大手の店が入ってくると。

なんかこう、世代交代の時期と、郊外化の限界、を両方感じる人たちが、これをどっちの方向に持っていくんだろう、なんていうことを、この2日間で感じましたけどね。

路地裏好きのストリートワイズ派としては、もちろん「そっち」の方向を志向したいのですけど、何が出来るんだろうねえ、なんて考えてます。

路地裏の店で、瓶ビールと串揚げで、「バカだねえおまえは」なんて言われながら談笑し、商店街を歩き、地元で老舗で評判のそば屋に入り、そば焼酎そば湯割り飲んで、最後そばでツルツルと締めて帰ったんですけどね。

そばにわさびを散らして食べる、というのを別の下町のそば屋で、隣のおじさんに若い頃教えてもらってたんですけど、おじさんに「おっ、ツウを知ってるねっ」なんて言われまして。

下町ワイズ、ですか。