アンチかオルタナティブか~大塚家具とジャパネットタカタの事業承継の5年を考える~

大塚家具を実父との骨肉の争いの末に世代交代したムスメさんが社長を辞任しました。
 
大塚家具とジャパネットタカタのトップ世代交代と、あたしが事業承継世代交代に挑むのがたまたま同じ頃で、この4,5年ずっと両社が話題になるたびにチェックして参考にしたり反面教師にしていたニュースだったけど、大塚家具社長の引退で、何かが一区切りついた感じのニュースです。しかも今日、うちの31期(2019年9月~2020年8月)決算書が出来あがったという偶然。(おかげさまでこのコロナ禍の中、何の細工もなしに黒字決算で終えました。)
 
世代交代する時に、あたしは社員の皆さんに「オルタナティブであること」を宣言しました。先代の良い所は引き継ぎ、時代にあわない、自分にはできない、または違和感があるものは変えていく、と。そして経営理念に「不易流行」を加えて、更に「アンチ(対抗)は一時的なエネルギーは産むものの持続性に欠ける」という考えから、「無理は続かない」も社内の文化として根付かせたのですが、大塚家具の骨肉の争いから現在に至る道のりは、まさにその「対抗により生じた無理は続かなかった」ということと理解しています。
 
一方でジャパネットタカタの世代交代の成功は大塚家具とすごく対照的で、その後新聞で、大塚久美子社長をこのようにしたのは元会長である父親の溺愛が原因だったとする新聞記事を読んでなるほどと思いながら、興味は事業承継問題から家族社会学分野に移り笑、父と娘、父と息子の条件の違いも含めて長いスパンで考えると共に、両家の「母親」がどのような人だったのかというところに興味が移っていくのでしたが、それ以上は情報がなく、その後、未だそこに焦点をあてたものは目にしていません。
 
一説には全国120万社の中小企業が事業承継問題を抱えていて、その多くはこのままだと倒産廃業の危機にあるとされているのですが、事業承継世代交代問題は、単に経済問題の枠を超えて総合人間学というか「総合知」の問題だと思っていますし(どなたかは経営こそは総合芸術だとおっしゃっていますし)、事業承継というのは肉親であれ他人であれ経験した人にしかわからない壮絶な体験ではありますし、大塚家具とジャパネットタカタの事業承継の経緯を追いながら、戦後の社会・経済そして家族をめぐるドキュメンタリー本、だれも書かなそうなら、これも老後の愉しみにします。
 
日本の軽音楽とヤマハの盛衰史、キッチン南海と大衆文化史、それでこれで、研究テーマは3つ目。そんな長生きできそうもないけど(苦笑)、楽しみな老後です。