若い頃に社会学的考え方を取り込んだ理由を30年後に知る~宮台真司×野田智義「経営リーダーのための社会システム論」を読む~

あたしが33年続く中小企業の事業承継を第3者間で行ってから丸七年経ちました。コロナ禍やオリンピックに振り回されることもなく無事に生きております。
経営者になるのかも、またはなってからも含めて、いわゆるビジネス本という類を手に取ることはほとんどない人生でした。(このブログの過去を調べても皆無)その理由は2つあって、
1、他人の成功体験からは何も学べないこと
2、「教わる」より「学び」と「気づき」による効用のほうが大きいことを知っている
ということに尽きると思います。
そんなあたしが、この本の噂を聞きつけ、普段「新書」「哲学」「社会」「サブカルチャー」などの棚にしか行かないいつもの本屋に行き、まっしぐらに「経営」のコーナーに突き進んで本書を購入し、一気読みしました。

あたしは27年前の20歳前後ぐらいに「サブカルチャー神話解体」という本に出会ってからの宮台真司ファンです。90年代からテン年代まで、宮崎哲哉さんとのユニットであるM2などの共著も含めて、タイトルでビビットきたものは手に取ってきました。なので、この「経営リーダーのための」本の前半はそのおさらい的なもの、後半はその基礎を踏まえ、自分が何を考え何を感じ、何を目指して生きているか、その方向性の答え合わせするようなイメージで読みました。そして読後、その方向性に自信を深めました。

あたしはちょうど20歳ぐらいの頃、自分自身も若さ故の不安定、かつ、時代はバブル崩壊から震災、テロと不穏な空気になり、その中で出会ったのが「サブカルチャー神話解体」でした。「自分がどこから来たのか知り、どこにいるのか感じ、どこに向かうのか考える」ことが、その不安の自分、または不安の時代を突き抜けるために重要であることに気づき、そのための方法論の啓示を受けた気がしました。そしてその後読んだ大塚英志さんの「りぼんのふろくと乙女チックの時代」や宮台さんのほかの著作を貪るように読んで、それは確信に変わりました。(ま、それは後付で、そんなことよりも単純に内容がおもしろくて仕方なかったんですけどね)

随分後になってからですが、社会学者の大澤真幸さんは「ゲンキ(元気)」の定義を「自分がどこから来たのか知る」ことだとどこかとおっしゃってた気がしますが、あたしはまさに20歳の、あたかも当時UKテクノシーンの雄であったアンダーワールドのシングル「DARK&LONG」のような暗く長い道から抜け出し、まさに「ゲンキ」に社会に出て、20年後に中小企業の代表の役目を仰せつかるほど「ゲンキ」なままで生きています。これはまさに社会学のおかげでした、ということを改めて思わせてくれる一冊でもありました。。

前に東浩紀さんの「ゲンロン戦記」を読んだ感想を書いています。
https://fraflo.hatenadiary.org/entry/2020/12/11/091949

ここに書いたように、東さんとも90年代の批評家デビューの時代に書物で出会って、一旦離れ、ま経営というキーワードで書物で再会するという不思議なご縁があったのですが、今度は宮台さんが実業家のためにメッセージをくれるという。こういうあたしにとっての「ご縁」と「幸運」があることを噛みしめています。

経営者だからといってマウントとるとか上から目線とか、そういう欲は一切ないですけど、ホリエモンのある意味名言といえる「社長と社長以外はまったく違う」ということは確実にあって、自律的自立の経営を志して行動することからにじみ出てくる思想や哲学というのはあるわけです。
今回の宮台さん野田さんの本も、東さんのゲンロン戦記も、そういう立場から読んだ時の「腑に落ち方」があるということは、言えるような気がします。すべての「行動する知性」に敬意を表しつつ。

明日からまたがんばります。