UNKNOWN MIXという生き様

先日とあるレコ−ド屋でたまたま佐々木敦著「ハードとソフト」を見つけ、早速購入、拝読中でございます。

この人は音楽評論家とか音楽ライターとか「HEADZ」という日本における世界先端音楽の卸窓口みたいな事務所の主宰だとか、いろいろな側面を持った方ですが、僕は佐々木さん好きなんですよ。

だって僕が買うような、チャートや有名性を頼りにする人から見れば「特殊」な音源は必ず佐々木さん関係の人々がライナーノーツを書くのでよく文章を目にするんですが、そりゃ聡明で情報の感度がぴか一で言葉を選ぶセンスも内容もいい。(まあ実は個人的にも僕の幼馴染が佐々木さんのレーベルからCDを出していたりして、「遠い縁」も実はあったりするのですが。)


でも、そういった「特殊音楽」についての啓蒙や評論といった部類のものしか目にしてなかったので、割と「先端音楽畑の人」みたいな狭い認識で見ていたのですけど、この本を読んでぶっとびましたね。

この本は、クイックジャパンの連載を中心に、ノンジャンルで書いた様々なイシューが載っているんだけれども、音楽は勿論、政治から思想、世界情勢から他サブカル分野までを「まさに同列」の目線で書いていて、しかも本質、焦点はブレていない。いい本でした。
昔「UNKNOWN MIX」という伝説のイベントを主催されていましたけれども、まさに生き様が「UNKNOWN MIX」だという感じで。僕がいう「KAKUSAN」(敢えてアルファベット(笑))と原理は同じですけれども。

これだけ情報とモノの溢れた時代には、「知性」というと情報をどれだけ取捨選択できて、それを自分でEDIT、OUTPUTできるということに尽きてしまうのですけれどもね。特に90年代における佐々木さんの役割というのは重要だったでしょう。僕、平岡正明とかも好きですけど、彼がジャズ批評を昇華させていったような役割っていうか居場所っていうかそういう匂いがありますよね。

とにかくその本には畑の違いを無視して、様々な人名やトピックが出てきますけれども、まあ全て認知理解ができる人って、どのぐらいいるんでしょうか。だっていきなりひとくくりで大塚英志古谷実とマイアミのエレクトロニカインディペンデントレーベルを語る文章から始まっているんですよ。これを結論にうきうきしながら読める人って、買う人も恐らく少ないと思うのに(笑)、果たしてどのぐらいいるんだろう?気になる数字です。
僕はうきうきしましたけども。

佐々木さん、ライナーノーツの文章では分からなかったのですが、恐らく文体に関しては大塚英志の影響下にある気がします。特に社会情勢や政治について書くとき。慎重さというか、モノを書くということの「戦術」自体に影響を受けているからかもしれません。

日々、膨大な情報の中から「直観」めいたものを根拠に(まさに吸い寄せられるように)断片化した情報を自分の中に取り込んでおく。ふとしたきっかけで関係性が目に見える形に繋がっていくこともあるし、無いまま放置されることもある。
自分で表現の本質を見つけて、そこから見える関係性、なんかを丹念に見つけていくには膨大な「思慮」の時間が必要で、でもそれは楽しいことでもありますよね。何かがふっと繋がったとき、それを発見した時の喜びってのは、一言では言えない。それこそ「現代に生きる喜び」ってな瞬間です。

しかし一人では限界がある。

僕が「知性」として敬愛する諸氏は、その「発見」を惜しげもなく見せてくれる。僕がここに駄文を繰り返し書くのも、その発見の時間が欲しかったり(書いているうちに気づく、とかも多いですもんね)またその発見を提示して、使える人には使って欲しい。そんな動機だし、ここのはてなブログキーワードリンク機能って、ほんとその為(理解補助)のために付けられているわけだし、ひとつのまとまりの中にどれだけの「奇異な組合せ」のキーワードが出ているか、なんてことが評価だったりしませんか?僕はほぼそれですけどね。

毎日、「おおー、そうきますか」みたいな情報、知見に出会いたいと切に願っているし、その為にも直観を頼りに「迷ったら前に出ろ(星野仙一)」で、いろいろなモノゴトに飛び込んでいくのです。