希望格差のカギを握る「武士のような女」

さて重い話が続きますが、最近盛り上がっている他の社会問題といえば、「教育問題」ですよね。教育問題って実際子供なんか持ったりすると、強烈に考えるようになります。階層化社会、希望格差社会、というような言葉が非常に際立ってきますが、このままいくと、学校や家庭を取り巻いての教育ってのがかなりやばくなる、ということはあると思いますね。

その件に関して、前のこのログに名前を出した内田樹氏の最近のブログが大変おもろ、です。「希望格差社会山田昌弘)」「大衆の反逆(オルテガ)」「階層化ニッポンと教育危機(苅谷剛彦)」の3冊をからめて、日本がこれからどんな憂鬱な状態になるか、を考察しながらエリートって何?大衆って何?という命題に向かって書いています。この方「難しいことを簡単に語る」プロで、非常に好きですね。

詳しくはそちらを見ていただくとして、その中で特におもしろかったのは
社会はこれから文化資本を持つ者と持たざる者、生きる努力をする者としない者、世の中のカラクリに気づく者と気づかない者、知恵を出すものと出さない者の2極差異化が際立ってくるわけですけど、例えば結婚という事象1つ取ると、①持つ者同士結婚、②持つ男と持たざる女の結婚(玉の輿)、③持たざる者同士の結婚、④結婚できない人、という形になっていって、①の少数強者連合と③の弱者群(子供を一番産む層、できちゃった婚が多い)、そして膨大なる④を産み出す、と。(年間に結婚75万人に対してできちゃった婚15万という統計、びびった。)

ちょっと考えればわかることですが、④は2層あるでしょう。「普通」に考えると、今は仕事も余暇も充実してるし、結婚や出産は人生戦略的に負荷が高い。(要は面倒臭い、背負う自信がない)という高学歴層(④−1)、今の生活は抜け出したく結婚はしたいが、本当に出会いも相手もいないという層(④−2)、の2層になりますよね。

でも、「自然淘汰」の意味では、2層は変わりありません。つまり負荷が高い、とかそういうものに果敢に立ち向かっていかない以上(前回の丸山思考でいう「TO BE」維持)高学歴といっても所詮そこまでの思考範囲、ということになりますよね。勿論本人達だけが悪いのではなくて、それを導いた先行世代の教育の問題もあるわけですが、とりあえずここでは放っておきます。(笑)

知識人の言う社会不安とは、結婚もしない、子供もいない、社会資本も持ってない、という持たざる層があと数十年たったら溢れ返るわけですね。年金受給資格もないとなれば自暴自棄で犯罪に走ったり、暴動が起こったりするかもしれませんね。①層が住む住宅街や私立の学校を狙った犯罪が多くなったりねえ。そうするとますます①と③④は隔離されていく。(③できちんとした教育を受けない子供達の動きにも注意しています。)
これからの政治の動きでも変わってきますが、今の流れを見ているとそれは変え難いんじゃないですかねえ。それを内田ブロクでは「大衆社会の本当の到来」とおっしゃっていますね。(大衆社会の行き着く先はファシズム

うちの子供、どうしようかなあって思っちゃいますよね。まあ、学校選択制とか言ってますけどねえ。実は接してみると、ちゃんと節度と社会資本を兼ね備えるている(道徳の問題が入るので日本語で的確に表しずらいんですけど)とか、持つ者と思って近づいたら金だけ持ってるつまんない奴だった、とか様々だとは思うんですけど、これだけ不安を煽られるとねえ。子供にとっちゃ、安定、安心の一定層が集まる所(私立)と、多種多様な層が集まる不安定だが人間を強くする場所(公立)と、どっちがいいんだろうかなあ、とは正直思ってしまいますよね。「親心」として、ですけどね。普通に考えれば多様なほうがいいに決まってます。その後ウン十年社会を生き抜くには、そこをサバイブする能力が不可欠ですから。

内田樹のブログによると、人間は「環境が整えば」とか「その気になれば」とか、そういうもので子供の力が上下するもんじゃないと言っています。つまり両親とその出自によってある程度力は決まっていると。だとすれば、与えられた条件の中で子供に生きる知慧をひとつでも多く与えてあげることが大事なんでしょうね。やるかやらないか、がんばるかがんばらないかは子供次第(というか血)だというあきらめは、大事なことですよね。これからは特に、ね。おしつけの民主主義や人権なんたらっていうのは通用しなくなっちゃいますからね。それは20世紀のささやかな夢だったのかもしれませんね。(笑

そんな時代に子供を産み育てるなんて子供が可哀相、という人もいらっしゃいますけどねえ。大変な時代だからこそ、己だけでなく家族(同志)で必死に考え、生き抜く知恵を絞りだし、実践する。喜びは倍増し、悲しみ苦しみは半減する、という基本は忘れちゃいけませんよね。
会社という組織に属するくせ俺は一人で生きていくなんて寝言を吐く輩も多いんですけどね。

ただひとつ加えておくと、自分もパートナーも「武士道」的な人じゃないと生き抜くのは厳しい。(笑)もう男も女もない。この世をサバイブする覚悟と知恵をもった男女が結婚しないと淘汰される危険性が高く、人は本能的にそれを感じているので、結婚できる人が減っているし、武士論理を分かっている人はそういう人が現れたら離さず結婚する。世の中にそんな「武士」の駒、ありませんからね。癒し、とか「だけ」をパートナーに求めてるうちは厳しいですよ、ね。