レクイエム続 一柳慧さんを偲ぶ

レクイエム。一柳慧さん訃報。
 
確か近年、現文化庁長官の都倉俊一さんと同時期に文化勲章を受章したと記憶していたのですが、お亡くなりになりました。現代音楽家というより、オノヨーコの最初の旦那という印象のが強い。あたしの教養のレベルが知れますが(笑)。
 
今朝の朝日の追悼記事には、一柳慧に影響を与えたのは同じ現代音楽家のジョンケージで、ジョンケージに影響を与えたのは禅思想家の鈴木大拙だと書いてあって、良記事です。何でも洋→邦の一方通行で物事が影響を受けるわけではないと、ある意味当たり前のことを指摘したのは大瀧さんの分母分子論でした。
 
 昔、永六輔さんが亡くなった時の追悼記事も、高田文夫に影響を与えたのが永六輔永六輔に影響を与えたのは三木鶏郎だという構成になっていて感嘆した思い出があるんですけど、こういう故人の追悼の仕方好きです。
 
記事は、一柳さんを(心象的)アナーキストだと評しています。「一柳さんはアナーキストだったのではないか。皆がいつもとても勝手をしている。でも他者を決して傷つけない。おごらず、慎みを保って。」と書いてあります。そしてそれは50年代のニューヨークでの暮らしがひとつのモデルだったとも。
 
アナーキストの前に(心象的)とあたしがつけたのは、「アナーキズム」を主張し徒党を組む「アナーキスト」たちとの区別のためですが、「心象的アナキスト」という言葉を最初に聞いたのは山下達郎からでした。
 
これまで散々書いてきたように、あたしが好きな、大瀧細野山下、そして桑田さんを含むポップス四天王(@菊池成孔)も、上述したような一柳さん的在り方を表現でもそれ以外でも追求した人たちであることを考えれば、四天王の先達のひとりは一柳さんということになりますね。
 
あたしもそろそろ人生50年、その半分以上を心象的アナーキズムを醸成しやすい都市生活者として生きてきて、心象的アナーキズムの本質を体感として理解できるようになってきました。あと何年生きられるか分からないけど、なんとなく若い頃からそういう志向性を模索し、行動し、思考しながら生きてきて良かったなと思えるのは、きっととても幸せなことなんだろうと思います。一柳さんのような先人が同時代にいたことに、改めて感謝と追悼の意を記しておきます。
 
※ちなみにあたしには息子がいませんが、息子がもし生まれたら「一慧(いっけい)」と名付ける予定でした。それは一柳慧さんからというより、ルポライター鎌田慧さんからの影響が大きいですが、いずれにしても、あたしは無類の「慧」フェチであることを付記します。