不器用な面々

昨今、急に「世襲」というのが注目されるようになってきました。

世の中の多くの中小企業や個人商店は、後継者の不在、という問題を抱えていますが、政治は2世3世が多いとかいって、急に世襲禁止世論が盛り上がってきました。

法の下の平等を考えれば、世襲を「禁止」っていう議論もどうなんだろうというのもあるんですが(苦笑)、今の政治の状態や、世襲が議員の過半数を超えているという現状を見ると、まあ「禁止」っていう極端な議論も起こってくるわなあとも思います。

そこでこう思うのですが。

世襲議員たちは、「政治がやりたい」というより「政治家しか出来ない」から政治やってんじゃないですかね。伝統芸能の人たちで、歌舞伎の家の出の人は「歌舞伎しか出来ない」から歌舞伎をやっている。

それは能力の問題だけではなくて、環境の問題もあると思いますけど、いずれにせよ総合的に「それしか出来ない」状況なんだと思うんです。

わたしは世襲政治家伝統芸能家も知り合いいませんけど、中小企業のオーナー社長ならたくさん知っています。彼らを見てて思うのは、「社長をやりたくてやっている」というより「社長しか出来ないわこの人」という人も多かったりすると思います。(笑)

わたしがサラリーマンやろうと思ったきっかけのひとつに、あるミニコミ誌を発行していた編集人から「frafloちゃん、人の下につけない人は、人の上には立てないよ」ということを言われて、うーん、そうかもしれないと思って、就職する決意をしました。(正解でした。)

つまり、人の下につけない人が社長やっているってパターンも、多いんです。

人の下につく人が人の上にたっていくというプロセスを踏んで、権力者のバランスを保ちやすい上場企業が割と安定するのは、だからよくわかります。バランスがなかなか崩れないですよね。

政治家も中小企業のオーナー社長も、それとまったく逆のシステムで動く人たちです。

その人たちを「それがやりたくてその立場にいる」というよりも「それしか出来ないからその立場にいる」という視座で考えれば、いろいろ対応方法も変わってくると思うんですけどね。

なんで世襲議員過半数を超えちゃうかというのは、いろいろ理由があるわけだと思うんですが、問題なのは、多くの「社長しか出来ない」人たちがオーナーの企業活動が伸び悩むのと同じで、日本という国も「政治しか出来ない人たち」のモチベーションに導かれるから、伸び悩むということですよね。

その状況で、世襲政治家は「ボクから政治を取り上げないで」と言っているかもしれませんよ。(笑)だから、そのためには何だってするかもしれない。地縁ネットワークが崩壊して地場が危ういとなれば、民度を下げて(投票率を落として)当選確率を上げるような「非常手段」だって、とりえますよね。(こないだツイ、ある政治家が言っちゃってましたけどね公衆の面前で)

「政治しか出来ない」彼らから政治を奪うことは、個体生命の危機だとすれば、その危機を脱するためなら、なんだってする。あたかもホラーサスペンスのように(笑)グロテスクな人間性を全面に出して、彼らが個体を守るのだとしたら、保守勢力は、やっぱりとんでもなく強さを発揮しているということになります。(笑)

保守か革新か。

わたしは常に「自分を」革新していきたいと思う人間なのですが、革新は実験の集積なので成功も失敗もたくさんあるわけです。そうすると国民の安心を全体として保つのなら保守も大事だよねと思います。
(それはあたかも、自分の立場に固執するオーナー社長の率いる企業が、伸びはしなくても、結果しかし企業は存続され、多くの社員の生活が守られるということもあるように)

だから、ボクから政治を取り上げないで、の世襲議員のグロテスクさで、国が保たれているという考えもできるわけですけどね。(笑)

ただ、もうその保守体制では限界も近いから、こう騒ぐわけです。いろいろと。

今が最悪だけど、底をついた、とか、適当なことを政府は言ってますけど。(誘導です)
現状維持=衰退のプロセスを踏みながら、日本はきっと「自然最適化」の道を辿っているかもしれません。そのために「世襲議員」の存在が、構造的に一定数必要だった、とか。

過半数以上が「世襲」というのも異常で、それを「禁止せよ」という対置療法も異常ですけど、全ては必然だと考えたほうが健康的ですね。「ボクから政治を無理やり取り上げた」時の国の乱高下を考えたら、今のまま国政の衰退のプロセスを見守りつつ、「本当は政治をやりたい人たち」が、まずは自分の関係者を救えるか仮説立てて実験していって、その個別の拡がりの中から次の全体最適化の方法が見つかればよい(次の日本が見えればよい)、ぐらいの時間軸のスパンで見るってのが、現実的なような気がしますけどね。

それで地方自治体がロスジェネ層が牽引し始めている、なんて、地味な(一部派手な)盛り上がりを見せていますけど、それは上記のような文脈なのではないか、とわたしは考えます。いきなり国政に打って出る、じゃなくて、いつ国に届くのか分からないけど、市議から初めてみる、とかね。そういうロングスパンで身の丈からモノを考える人が目立ちはじめてきたのは、素晴らしいことですよねえ。

ま、その前にカリスマが現われて革命が、みたいなこともあるんですけども(笑)それはそれで、おもろい話です。

ということで、今週もお疲れ様でした。