流れ者図鑑

個人的なお話ですが、いま引越しを考えておりまして、物件見ております。都下の閑静な住宅街で、大学がボコボコとある、あの場所です。

それで、出来れば一軒屋がいいかな、なんて思って借家も入れてみておりますが、なかなか「これ」っていうのにめぐり合うのが難しいですね。家探しってのは縁で、わたしは好きなんですけどね。

家族がいないときは、理由もなくとにかく繁華街の雑踏に住みましたので、別に「住みやすさ」はほとんど考慮しなくて良かったのですが(ほとんど家は寝るだけだし)、今は家族がいて昼間家に人がいるので、住みやすさ、は考えないとね、です。

昼間日当たりがよいか、とか、騒音はどうか、とか、学校や図書館は近いか、とか、子供が不慮の事故にあったりする環境じゃないか、とかですね。それひとつひとつは具体的なことですけど、最後にわたしの全人格をかけた総合的な判断力が問われます。

引越しをたくさん経験しているからかもしれませんけど、その「総合的な判断」を、わたしは感覚に置き換えちゃうんです。つまり実地を見にいって、最初にどう感じたか、の皮膚感覚で、その物件の可否を決めるんです。お店入って、なんかここに長くいたくないなーとか、そういう感じってあると思うんですけど、それと同じです。だから妥協の念がなければ、決して迷わないんですけどね。
探し回っていると、でもあるんですよ。「あ、ここに住めって言っている」という瞬間って。

言葉で説明しにくい領域なのですが。。

でも、不動産屋の人間動かしてますから、「ダメだった理由」は語るのが義務だと思ってまして、でも皮膚感覚だから、説明のしようがない。(笑)いや、なんとなくダメだって、心の中のわたしが言ってるんですよ、って不動産屋さんに言ったって、説明責任はひとつも果たしていないんですね。(笑)こまったもんです。

年齢的にも、家族がいる立場的にも、家を購入、というような流れとか雰囲気もあるんですけど、わたし今は賃貸派ですね。お金の損得なんてのはどうでもよくて、なんてったってオミズマインドなんで根が流浪なんですけど、所有欲が今はないし、キャッシュだったら買ってもいいですけど、借金前提の生活ってどうなんしょって、単純に思っていますね。生活や人間関係、仕事に無理が生じるでしょうからね。こういう時勢になったら、それは無駄に追い詰められるだけなんではないかねえ、というのが、家探しと一緒ですけど、わたしの皮膚感覚です。

個人的な歴史ですけど、わたし4年以上同じ場所に住んだことが無かったんですね。今のところは5年住んじゃったので新記録なんですけど。実母の看病と死という現実がなければ、4年で引っ越してたでしょうね。

これは、「オミズマインド」という実存に決定的に影響している歴史だと思いますけど、元来「流れ者」なんですよ。

40過ぎて、いろんな意味でもっとシンプルになっていて、いい感じの家が設計できて、キャッシュも目処がつく、ぐらいの時がくれば、持ち家を持つかもしれませんけど、ウルトラマンじゃないですけど、4,5年同じ場所に住むと胸の赤ランプが点滅し始めるんですよね。(笑)

生き急げ、流れ者。流れることを前提に、その場を濃密に過ごせ、流れ者。

平野勝之監督の「流れ者図鑑」を、再度見たくなってきました。