マジカルバナナ

最近ビジネス系メディアでよく「選択と集中」という言葉が出てきます。事業を取捨選択して、そこに集中する。つまり何でも屋はやめて、ここというところに資本を集中させなさい、ということですが、そんなの普通に企業活動していれば「当たり前」のことで、太っている人にダイエットしなさい、といっているのと同じです。

アメリカ主導の資本主義経済の下で「おおきいことはいいことだ」という言葉がありました。大量生産、大量消費の時代ですね。ものづくりは、「大量生産」から「個別生産」へ、「大量消費」は「選択消費」へと移行しましたけど、「おおきいことはいいことだ」は、何故か残ったんですね。

で、企業は大量生産の時代ではないけど、いつからか「おおきくなくてはならない」ということになって、事業や投資といったことで何でも食べて、太っちゃったんですけど、それを今「痩せないと死にますよ」と言われている。「選択と集中」は、強欲メタボオヤジへの最期通告なわけです。

「おおきいことはいいことだ」のときは、「いいことだけど、まあ小さいのもありだよね」ですけど、「おおきいことしかみとめらない(おおきくなるのは必然)」という風に、いつからなったんでしょうね。結構どの企業でもおおきくなることは、しごく「当たり前の目標」みたいになっていて、不思議でした。

企業活動で3ヵ年計画とか作って(3年以上は、今の時代は無意味です)、計画書の雛形引っ張ってくると、1年目、2年目、3年目の姿とか書く欄があって、「売上」「粗利」の欄は勿論、「従業員数」って欄があるんですね。今が100人だったら、1年目120人、2年目200人、3年目 500人、とかって計画を作らないと、「夢がないね」とか「そんな目標設定が低くちゃダメだよ」とかいわれるんですね。

前から、不思議だな、と思いつつ、「そうですかねえ。固定費増やさずに売上上げたり利益率高めること考えるほうがまず先だと思うけど」とか言って、当然のようにそういうこと言う人とはあまり関わらないようにします。(笑

夢や目標を持って、何かを成すことは大切で、そこに携わってくれる仲間が年々増えていくことは、確かにステキなことです。売上も利益も上がってキャッシュフローできて、ステークフォルダを幸せにできれば、それに越したことないですよ。でもですね、企業は活動を続ける以上、「規模が大きくなること」を前提としなければならない、というような不文律っていうか常識というか、少し気持ちの悪い感じがしてました。

今回の企業世界に号令される「痩せろ」指令で、またたくさん人が不幸になるし、たくさん無駄なもの、が世の中に置き去りにされるだろう、ですね。だから、選択するのも集中するのも勝手ですけど、その前に自分の在り方を問わずに、なんとも思わずにブクブクと太ってしまった自分を省みたいところですけどね。

バナナに選択と集中をして痩せる人がいれば、バナナに選択と集中をして太る会社もあるって、バナナで完結する世界のうちは単純でいいですけど。バナナ屋がバナナ畑潰して土地転売とかしだすから、世の中わかりにくいんですかね。(笑)