森田一義アワー

先日、セックスレスに悩む既婚の女の子の愚痴話を聞かされて、同じタイミングで読んでいた橋本治の本から「性欲」の本質は何か?を学んだので、絡めて書いとこうと思いましたが、夏バテで眠いのと(笑)まとまりにかけるのとでアップできず、3日が過ぎてしまいました。

オチをつけるのが難しいですね。性の問題は。。

とか言ってる間に、前エントリでちょっと話題に出した「川口父娘殺人事件」の動機が明らかになってきました。明らかになったというか、やっぱりね、な内容でした。少なくとも、予想どおり「同じ年代の子供を持つ親」を安堵させる動機ではありませんでしたね。

だとすれば、親達は「忘れる」しか安心する方法はありません。(ですのでメディアは控えめな扱いになってきてますが(笑)メディア側の人間の心理が見て取れます)

今15歳ぐらいの子供を持つ親は、40〜45ぐらい、つまり前回エントリで説明した「遅れてきたバブラー」と同年代ですけどもね。一見幸せそうな家族なのに子供が親を殺しちゃうという事件は、80年の「金属バッド殺人事件」あたりがメディアで取りざたされた最初だと思いますけど、25年前、今40〜45歳の人は、金属バッドで親を殴り殺した子供と同じぐらいかちょい下か、ですね。その事件を当時どう見ていたんでしょうかね。

父を刺し殺した娘は、学校で人に気を使って生きるのが嫌で、生きるモチベーションが落ちて、成績が落ちて、学校をずる休みして、それが親にバレる日(3者面談とかっすかね)が刻々と迫ってきてたらしく、家族を殺そうと思った、が動機でした。

「人に気を使って生きるのが嫌になって」がポイントですかね。

「ぐっとエデュケイションシンドローム」のエントリでも書きましたけど、親や周囲の顔色ばかり伺うように子供になっちゃうのは、親が感情的に振る舞い過ぎちゃうのが原因で、私が見ていると「息が止まりそう」になる親子の母親も、自分の周囲の目を気にして、子供に感情的に振舞う。そうすると子供は、いつも親の顔色を伺って振舞うようになる。知恵がつくと「目の前で善、陰で悪」になります。親は子供がビビッてるのが分かるので、余計イライラして、また感情的になる。のスパイラル。

こういうのは別に時代性とか世代性とかってことじゃなくて、あるところには昔からあった光景だとは思いますけど、やっぱり私は「見栄と虚飾」って根本的に嫌いなのですが、この家族の母親、この娘の告白を聞いて、どう思うんでしょうね。

赤塚不二夫が死んで、タモリの弔辞が全文掲載されてますけど、その中にこういう一節がありました。


【あなた(赤塚不二夫)の考えは、すべての出来事、存在をあるがままに、前向きに肯定し、受け入れることです。それによって人間は重苦しい陰の世界から解放され、軽やかになり、また時間は前後関係を断ち放たれて、その時その場が異様に明るく感じられます。この考えをあなたは見事に一言で言い表しています。すなわち『これでいいのだ』と。】



いたく共感しますね。

人を在るがまま受け入れ、自分を在るがまま出す。「見栄と虚飾」は、その人が世間のしがらみから突き抜けられていない(つき抜けられない)ということですけど、遅れてきたバブラーも、この事件の両親も、辛い顔して生きて、部下や子供に辛い顔で八つ当たりしてたんでしょうか。

どうして「これでいいのだ!」となれないかというと、楽しまなきゃいけないときに、「楽しい」が虚栄だったのではないですかね。だから反動も大きい。90年代以降は「楽しい」が等身大になってきたので、辛さに対してもブレが少ないんでしょうか。

昨今叫ばれる「格差社会」という単語も、「見栄と虚飾」で、「人に遅れをとらない」を脅迫観念として生きてきた人たちが、特に大騒ぎしています。だから、「格差」は「経済格差」が常に焦点です。現役バブラーが牛耳るテレビや雑誌のメディアでは「誰がいくらもらっている」とか、そんなのばっかりで、品がない、と単純に思います。根源的に精神が貧しい。

このタモリの言う「重苦しい陰の世界」というのは、自分の内面の「陰」でしょうかね。自分や他人の内面の陰を在りのまま受け止める知性も勇気を育ててこなかったので、見栄や虚飾に走り、人やモノに小さな幻想(物語)を求め、安心します。「あなたは素敵よ。遅れてないわ。」小さい幻想をもらうから「小悪魔」は「小」です。(笑)

小悪魔が悪魔に、幻想がリアルになるまでとことんつきあって、自分の「陰」をわしずかみにされて、それを目の前に出されて、そうかオレはこうか、と自覚すること、明日を生きるヒントにすること、赤塚不二夫の在りのまま、とはそういうことで、それは幸せとは限りませんけど、人にあわせて「幸せなフリ」して一生を終える虚しさに比べれば、マシですかね。

余談ですけど、わたしの知り合いの小悪魔嬢、歌舞伎町のあるお店でNO1で雑誌のモデルもやって、さぞ高収入でしょうけど、ブログで「ドンキで買い物するの大好き」と書いちゃう。バブル影響化にある人々には考えられない、その屈託のなさ、見栄と虚飾の対極にある力強さに、日本の微かな未来を見ますって、言い過ぎですか。(笑 あ、「ドンキ」もヤンキー文化でしたか。。)

40年後に小悪魔が表現する「これでいいのだ!」のバカボン的バカ前向き。
早すぎた天才、赤塚不二夫のご冥福をお祈りします。