ピアノが愛した女

友人に借りて、矢野顕子の15年ぐらい前のレコーディングドキュメント映画を見たんです。奥さんと感動してました。子供はずっと踊ってました。

矢野顕子のオリジナリティというのは今さら言うこともないんですけど、とにかく緊張感というか、追求道というか、迫力がすごいんですよね。プロとは何か、を再確認しちゃいます。

昔の若いころからへたくそなツアーメンバーを辞めさせたり、一緒にまわったメンバーが神経症になったり(幸宏)、とにかくいろいろ傲慢な話は絶えない人ですが、そういうのは真剣さゆえ、であって、その真剣さを才能を持って受け止められる人ってのは、だから細野さんだったり、ほんの少数だったでしょうね。当時から。

見てると、孤独なんですよ。もう悪く言う人、苦言を呈する人は誰もいないんですよ。親が死んじゃったみたいな、ね。しかったりたしなめたりする人がいない。大御所、ビックネーム、頂にいる人の孤独さ、辛さ、みたいなものがもの凄く出ていたんです。それが良かった。

この間図書館で、みうらじゅんの居酒屋ロックという本を借りたのだけど、そこで真心ブラザーズがゲストに出てて、奥田民生井上陽水の適当さというか天然さというか、ああいうものには勝てない、みたいなことを言っていて、それはみうらじゅん根本敬が確信犯的にガロ的であろうとする反面、蛭子さんの天然ぶりがくやしい、みたいな話があって、矢野顕子も天然だよな。ポップ、非ポップとか、売れる売れないとか、そういうのはどうでもいい所で戦っている感じが、やっぱり最強だよな、と思うんだよね。「あたしは歌とピアノ以外でお金もらったことないから」と言い切るあたりとか。

是非、淡谷のり子黒柳徹子ばりの、パワフルおばばを目指していただきたい。森光子はちょっと違う。(笑)

居酒屋ロック、良かったですよ。やっぱりあの辺りの人脈系ね。みうらじゅん安斎肇水道橋博士、田口トモロウ、いとうせいこう藤原ヒロシ、近田春男(以下追って書いていくときりがないので、後はそれぞれよろしく)、先日の橋本治内田樹もそうですけど、まわりくどい知性、ということで。(笑)最高。