ダイナミックかつ繊細なリズム考

お蔵入りCD蔵出しキャンペーン開催中ですが、その後もCD棚から一枚ずつ聴いていくと、先日polarisにぶち当たりました。このバンドは元フィッシュマンズのベーシスト柏原譲が在籍しているバンドです。ダブポップですね。

ここのドラマーの坂田学という人は、もの凄くいいドラムをたたく人で、中学からドラムを趣味とする私のストライクドラマーなんですね。最近知ったのですけど、この人ジャズサックスプレイヤー坂田明氏のご子息とか。なるほど、という感じです。

坂田明というとタモリ、ですよね。ゴールデン街仲間。山下洋輔グループ出身ですから。昔テレ東で「タモリの音楽は世界だ」っていうのがあって、坂田明も出てましたね。あの番組、結構いろいろなミュージシャンをフューチャーしていて(是ちゃんバンドもいたし)、あの番組の作り方は、今の「誰でもピカソ」あたりに受け継がれている感じですよね。スーパージャンキーモンキーが出演して、東海林のり子がはしゃいでいる、という場面が今も忘れられません。(笑)

で、この坂田学のドラムの音のクリアさ、ダイナミックなんだが繊細な音の構成、こういうドラマーっていそうでいないのです。
僕がガキの時に影響を受けたドラマーに、元筋肉少女帯太田明とかsmashingpampkinsのジミーチェンバレンとかいますが、みんなこの「ダイナミックかつ繊細」を体現している人です。音の良さ、フレージングの良さ、それはテクニックというよりもセンスの問題であるわけです。(勿論、息の合うエンジニアの存在、坂田学におけるZAK、みたいなのも重要な要因ですけどね)
セッションミュージシャン系なんかにもこういった人はいっぱいいるわけですけどもね。村上秀一とか林立夫とか、沼澤尚とか大勢の個性のあるセッションマンが。でもなんか、楽器のプロではなくて、バンドの個性の一部として(つまり訓練ではなく、無意識の表出みたいなもんで)こういう人達を愛してしまいます。

ダイナミックさ、というのは重量感と言いますか、安定性といいますか、そういう部分でしょうけど、繊細さというのは、音符をどこまで細かく気遣うか、ということだと僕は思ってます。専門的な話はあれですけど、4分、8分、16分、32分と音符は細分化の歴史を刻むわけですけど、その4の裏、8の裏、16の裏(オフビートというんですけど)を非常に大切に扱い、それを踏まえてフレージングする、という人に基本的にしびれますね。

中高ぐらいの頃ってバンドブームで、ビートパンクとかいってとにかく粗いリズムばかりでしたよね。僕はレピッシュとか好きでしたけど、あれはスカで、4の裏でリズムをとるから、それが心地よかったのかもしれません。(リズム隊、しっかりしてましたもんね)でも当時ドラムテクニックとしてはやっぱり「縦のり8ビート」一辺倒なわけですよね。裏を意識したものをやりたくても技術が無かったし。中高生でも出来る、というパンク以降の流れがバンドブームを引き起こしたわけですし。

しかしこれが驚くことにですね。高校出るぐらいからアンダーグラウンドなテクノを聞きにクラブとかに行って朝まで狂ったように踊る、とかいうことを続けていたら裏を意識する感じが体に浸透してきて、ドラムの技術もそういう形になっていくんですね。自然と。
体というのは実に不思議です。

でもクラブで同じ音楽がかかっていても、ジャストを基軸に踊る人と裏を基軸に踊る人っているんですよね。面白いことに。それじゃ80年代に椿ハウスあたりでニューウエーブでぴょンぴょん飛び跳ねてる時代と変わらない。(笑)裏で飛び跳ねるのは大変ですからね。

「ドンドンドンドン」という4つ打ちを、そのまま体で感じるのと「ドン アー ドン アー ドン アー ドン アー」と(この「アー」がオフビート)意識して音を感じるのとでは、踊りの見た目も違う。もの凄く疲弊しますけどね。「アー」をずっと意識してると。

最近子供パーカッション買い揃えてましてですね。コンガ、ボンゴ、なんでもあるんですよ。音がちゃんとしているのでびっくりしますが、パーカッションこそ裏を意識しないと叩けません。今から裏教育が始まってるわけです。うちでは。(笑)まあ僕が叩いて子供が踊る、みたいな構図ですが、裏を強調してやると、ちゃんとそれに反応するんですよ。それから、ですがなんと子供は横のり(裏の強い)音楽で(しかもBPM110ぐらいの)だと体を動かすようになってくる。これ、ほんとです。

音楽にはリズム、ハーモニー、メロディと3要素あるんですが、幼児ってのはリズムにしか反応出来ない、という話があります。ハーモニーとかメロディを認識するには時間がかかるらしいです。リズムしかわからないということはリズムに敏感だ、ということになるわけですから、裏教育しておく。これは別に他意はなくてリズム感がいいというのは体のバランスがいいということで、まあいいだろうぐらいなことなんですけどね。でも子供パーカッションが売ってるってことはそれだけ需要があるってことですから。実売数を知りたいところですが。

文字として書くには不毛な話題でしたが(笑)、とりあえず坂田学さん、ソロというかセッション系でやるようなので、がんばってもらいたいです。その周辺情報から得たのですが、父上とジムオルーク(凄い組合せ)でsakata/o’ruke(サカタオルーク)というグループで秋にライブCDが出るということで、こりゃ面白い。(ドラムは息子)
阿木譲とS−KENのログでも書きましたが、ジャズ近辺、なかなか全部追い切れませんけど、面白いですねえ。ドラムたたきたくなってきました。